日曜日の歩行者天国。雑踏の中、歩道の模様を飛び石に見立てて私は夢中で歩いていた。
いつものビルの角を左に曲がったとたん潮風が鼻孔をくすぐった。
あれっ、前を見ると景色が海になっていた。
誰もいない砂浜、目の前で白い麦わら帽の子供がおぼれていた。
私は思わず手を伸ばした。
弱々しい手が私に触れた。
まだつかめない。
海に入った。生暖かい水がひざまでぬらした。
手を伸ばした。
小さな手に触れたとたん、強いうねりの中に子供は消えた。
青い海の中に白い麦わら帽が静かに浮かぶ。
ふと我に帰ると、そこは人込みの中。
行き交う人々は何も気付かないかのように歩いていく。
私の手には、あの弱々しい子供の小さな手の感触がいつまでも残っていた。
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