「第八夜」


 朝起きると布団になっていた。
 ベッドの上の掛け布団になっていた。
 母が入ってきた。
 あら今日は早いわね。といいながらカーテンを開けはじめた。
 私はここにいるのに。
 声がでない。体も動かない。
 やがては母は階下に降りていった。
 私がいないと大騒ぎになるだろう。でも布団になった私は誰からも気付いてもらえない。
 誰も探しに来ない、階下の食卓からは笑い声さえ聞こえる。
 そして静かになった。父も母も仕事に出かけたようだ。
 なんて薄情な家族。そして惨めな姿の自分に泣けてきた。
 でも布団の私に出せる涙はない。
 これは悪い夢に違いないもう一度眠れば何もかもなかったことになっている。
 私は眠ろうとしたが、頭が混乱して眠れない。
 うとうとした時誰かが私の体に触った。
 それは私と同じからだをした違う私だった。彼女は私の下に体を入れると明かりを消した。

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