「第六夜」


夜十二時に合わせ鏡をすると悪魔が現れるんだよ。
章子から聞いた。
夜十二時が近づいた。
私はプラダの白い紙袋から友達に借りた鏡を取り出した。
勉強机の椅子の上に鏡を載せ、それを自分の鏡台の前に置き、合わせ鏡を作った。
その鏡の間に私は入ると静かに目を閉じた。
遠くで犬の鳴声がした。
階下で柱時計が十二の時を打ち始めた。
私は目を開けた。
前、後、前、後、私の顔が奥まで続く。
その私の顔は奥にいくほど幼くなっている。
16歳の私。15歳の私。14歳の私。……。
振り向けば未来の私が見れるかも。
奥さんの私。お母さんの私。おばあちゃんの私。
もし、鏡の中に何もなかったら…。
振り向く勇気がない。でも見てみたい。
その時、柱時計の十二番目を刻む音がした。
ふと我に帰ると鏡に映った自分の姿はいつもの自分に戻っていた。
手のひらはぐっしょり濡れていた。

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